研究概要 |
ポリフェニレンビニレン(PPV)の前駆体モノマーの重合を、アミロース存在下、ジメチルスルホキシド(DMSO)-アルカリ水の混合溶媒中で行うことにより、アミロースの形成するらせん状の空孔にPPVが包接された可溶性アミロース-PPV包接錯体(APPV)が合成可能である。申請者は、アミロース-PPV包接錯体に化学修飾を施すことによって、容易に機能性置換基を導入できることを既に見出している。本研究では、APPVに分子認識部位を導入し、キラルHPLC用の光学異性体分離材料としての性能評価を行った。APPVと3,5-ジメチルフェニルイソシアナートを反応させることで、APPVのフェニルカルバメート誘導体(APPV-PC)を合成した。得られた誘導体は濃厚ピリジン溶液中で複屈折性を示したことから、アミロースが形成するらせん空孔内に剛直なPPVが包接された超分子構造を保持したまま、分子認識部位の導入が達成されたと考えられる。次にAPPV-PCをアミノプロピル化したシリカゲル上に担持して、スラリー法を用いてカラムに充填し、溶離液にヘキサン/2-プロパノール(90/10)を用いたHPLCで光学分割能の評価を行った。APPV-PCは、市販されている何も包接していないアミロースの3,5-ジメチルフェニルカルバメート誘導体(ADMPC)に匹敵する高い光学分割能を示し、特にジアミド、ジアニリド化合物に対してより優れた分割能を示すことが明らかになった。また、一部のラセミ体に対して、APPV-PCとADMPCで溶出順序の逆転が見られたことから、アミロースがPPVのような剛直な共役高分子を包接することによって、そのらせん構造が大きく変化している可能性の高いことが明らかになった。
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