研究概要 |
【変異型Seipin遺伝子トランスジェニックマウス(N88S Tg mice)の解析】 昨年度までに、N88S Tg miceにおいて、表現型の解析により、N88S Tg miceの表現型として振戦様不随意運動、体重減少、Abnormal limb reflex、運動機能低下、歩行障害、死亡率高値が有意差をもって示された.今年度は、さらなる組織学的検討(脊髄・末梢神経・筋肉)、生化学的(UPR誘導マーカー(BiPなど)解析を中心に行い、本モデルマウスにおいて、小胞体ストレスが誘導されているか、表現型が生じているメカニズムについて検討を行った.N88S Tg miceにおいて、脊髄において免疫染色(anti-GFAP)を行なったところ、nontg miceと比較して、著明な反応性アストログリオーシスを認められ、脊髄における反応性アストログリオーシスを示唆された.次に、大腿四頭筋における筋病理の検討を行ったところ、N88S Tg miceにおいて、典型的な神経原性変化を認め、下位運動ニューロンの障害も示唆された.さらに、N88S Tg miceにおける軸索の変化について検討した.Kluver-Barrera染色にてventral rootおよびsciatic nerveにおいて、nontg miceと比較して、著明な軸索変性を認めた.最後にN88S Tg miceにおいて、in vivoにおいても小胞体ストレスが誘導されているかどうかを検討した.大脳において、Western blotを施行したところ、小胞体ストレス(Bip,PDI)の誘導を確認した.また、脊髄の運動ニューロンレベルにおいて、免疫染色にてKDEL、XBP1とのimmunoreactivityの上昇を認めた.以上より、小胞体ストレスの誘導に伴いaxonopathyを生じて表現型が出現していることが考えられた.本研究の遺伝子改変マウスで小胞体ストレスと運動ニューロンの表現型が観察され、神経変性と小胞体ストレスの関連を個体レベルで証明できた疾患となり、神経変性疾患の研究において重要な知見となった.
|