研究概要 |
糖供与体の合成は、従来、糖のヒドロキシ基の保護・脱保護など多段階工程を要する有機合成法に依存していたが、我々は、脱水縮合剤を用いて無保護糖から一段階かつ水中で糖加水分解酵素を用いるグリコシル化反応に利用できる新規な糖供与体4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イルグリコシド(DMT糖)を一段階合成することに成功してきた。これまで、DMT糖を糖供与体とする酵素的グリコシル化に用いた酵素触媒はセルラーゼのみであったので、これ以外の酵素を用いるグリコシル化反応への適用を検討した。はじめに、β-ガラクトシダーゼを触媒とするガラクトシル化を目的として、無保護のガラクトースを原料に、塩化4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム(DMT-MM)を用いて、4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イルβ-ガラクトシド(DMT-β-Gal)を水中で一段階合成した。続いて、β-ガラクトシダーゼを触媒とした酵素的グリコシル化を行った結果、収率46%で二糖生成物が得られた。同様に、グルコサミン(GlcN)あるいはN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)から一段階で合成したDMT-β-GlcNおよびDMT-α-GlcNAcは各々exo-キトサナーゼ、α-N-アセチルグルコサミニダーゼによる糖転移反応の供与体として有用であることを見出した。また、DMT糖の酵素による基質認識機構解明を明らかとするため、基質-酵素複合体のX線結晶構造解析を行うにあたり、DMT糖のアグリコン部のグリコシド結合を酸素原子から硫黄原子へと変換した加水分解されない基質を有機合成により5工程で合成した。
|