研究課題
特別研究員奨励費
これまでに、接着斑に局在すると考えられていたアダプター型の接着領域裏打ちタンパク質であるビネキシンが特定の条件下で繊維状接着構造に局在することを見出している。そこで、接着斑と繊維状接着構造形成の決定にアダプター型の接着領域裏打ちタンパク質がどのように関与しているのかを検討している。平成23年度は昨年度に作製したビネキシンとCAPの両方の遺伝子を破壊したダブルノックアウト細胞を用いて、さらにArgBP2の発現も抑制した細胞を作製するために、ArgBPに対するshRNAプラスミドの作製を行った。また、市販されている抗ArgBP2抗体はいずれも正しくArgBP2を認識できなかったため、平成23年度は抗ArgBP2抗体の作製に取り組んだ。作製した抗ArgBP2抗体はタグ付きのArgBP2を細胞に導入することで、正しくArgBP2を認識していることを確認した。これにより、ビネキシンファミリータンパク質を解析するための実験系を構築することに成功した。また、昨年までにビネキシン結合性アダプタータンパク質Dlg5は、TGF-βシグナル経路のうちTGF-β受容体からSmad2/3ではなくp38、JNKへのシグナルを抑制することで細胞の上皮間葉転換を抑制していることを明らかにしてきた。Dlg5の発現を抑制したところE-cadherinの転写調節因子であるSnailの発現量が増加することが分かった。このことから、Dlg5の発現抑制はJNK、p38を活性化し、Snailの発現量を調節することでE-cadherinの発現量を制御している可能性が考えられる。さらにJNK、p38の上流にあるTGF-β受容体の阻害剤で細胞を処理したところ、Dlg5の発現抑制によって誘導される上皮間葉転換が抑えられた。このことから、Dlg5の発現抑制による上皮間葉転換はTGF-β受容体を介したものであることが明らかになった。また293T細胞を用いた共免疫沈降を行ったところ、Dlg5はTGF-βI型受容体と結合することが分かった。以上のことから、Dlg5はTGF-βI型受容体と結合することでTGF-βシグナルを抑え、上皮間葉転換を抑制している可能性が考えられる。
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PLoS ONE
巻: 7 号: 4 ページ: e35519-e35519
10.1371/journal.pone.0035519