研究概要 |
アラメチシン(Alm)は,非タンパク質構成アミノ酸であるα-aminoisobutyric acid(Aib)を含む20アミノ酸残基から成る抗菌ペプチドである。両親媒性helix構造をとり,脂質二分子膜に電圧をかけると脂質中に入り込み,3分子~12分子が会合してイオンチャネルを形成する。本研究では,配列中にAibを含まずに安定なチャネルポアを形成するペプチドの創製,および外部刺激に応じてチャネル電流の変化する人工イオンチャネルへの応用を目指した。これまでに,AlmのN末端にhistidine残基を導入したペプチドHG-Almが,Zn(II)イオン等の金属イオンの存在下において,膜中に安定なチャネルポアを形成することを報告したが,これをAlmに含まれるすべてのAibをleucineに置換したAlm誘導体[Leu]Almに応用し,HG[Leu]Almを作製,チャネル電流測定により,安定なチャネルポアを形成するか評価を行った。その結果,HG-[Leu]Almは,HG-Almと異なり,Zn(II)イオンの存在下においても安定なボアを形成しないことがわかった。本年度は,この原因を探るため,Aib残基をnorvaline(Nva), norleucine(Nle)にそれぞれ置換したHG-Alm誘導体を合成し,蛍光色素封入リポソームを用いたリーケージアッセイにより,これらのペプチドの膜への作用様式を調べた。その結果,HG-AlkおよびHG-[Nva]Almについては,Zn(II)イオンによるリーケージ活性の増大が観察されたが,HG-[Leu]AlmおよびHG-[Nle]Almについては,逆にZn(II)イオンによるリーケージ活性の著しい阻害が観察された。また,これらのHG-Alm誘導体を用いて,Zn(II)イオンの添加と除去による溶出制御が可能であることが示された。
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