研究概要 |
本研究では、一酸化窒素(NO)関連病態であるパーキンソン病など、神経変性疾患のin vivo、in vitroモデルを用い、神経変性疾患病態時におけるNa^+/Ca^<2+>交換系(NCX)の役割を明らかにすることを目的に検討を行った。 研究計画に基づき、1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)誘発ドパミン神経障害モデルマウスを用い、選択的NCX阻害薬SEA0400のドパミン神経保護作用を詳細に解析するとともに、分子機序解明のため、酸化ストレスとの関連を追究した。また神経細胞において、NOがNCXを介して細胞内Ca^<2+>濃度を上昇させる分子機構を追究した。 具体的には、in vivoマイクロダイアリシス法によるドパミン遊離測定を実施し、MPTP投与マウスにおいて、黒質-線条体ドパミン神経の機能的評価を行った。その結果、MPTPによる線条体ドパミン遊離機能の低下が、SEA0400前投与によって抑制されることを明らかにした。また本モデルマウスの中脳において、NO産生の指標であるニトロチロシンならびに、活性酸素種の指標である過酸化脂質が増加していることを確認し、さらにSEA0400はニトロチロシン含量には影響を与えないものの、過酸化脂質の増加を抑制することを見出した。これらの結果は、NCXがNO産生には影響せずにその下流で起こる活性酸素種の産生に関与する可能性を示すものである。さらに、NO誘発神経細胞死におけるNCXの活性化機構をin vitroモデルで追究し、NOによる細胞内Ca^<2+>濃度上昇が、cGMP系シグナルを介する可能性を示した。以上の成績は、NOとNCXの連関機構の一端を示すとともに、パーキンソン病モデルであるMPTP投与マウスにおいて、酸化ストレスの増加を抑制するという、SEA0400の神経保護作用の分子機序を明らかにしたものである。
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