研究課題
特別研究員奨励費
前年度に得たマイクロアレイの解析結果を基に、子宮内膜症の治療ターゲットの探索を行った。前年度では、モデル病変組織の形成の初期段階で生じる遺伝子発現変動について、1)病変が病理学的に顕著に形成されるのに先行して細胞接着や細胞外マトリックスに関連した遺伝子が発現変動すること、2)形成された後の病変組織においてサイトカインに関連した多くの遺伝子が発現変動することを明らかにしていた。本年度はまず、病変形成に抑制効果を及ぼす可能性のある化合物として、ポリフェノール類(細胞外マトリックスの分解酵素MMPの発現を変化させる)とマクロライド系化合物(サイトカイン調節作用を持つ)を治療薬の候補とした。マクロライド系化合物としては代表的なクラリスロマイシンの他、類縁でより新しいタイプ(ケトライド系)であるテリスロマイシンの効果を検討した。結果として、クラリスロマイシンとテリスロマイシンが病変形成抑制効果を示した。子宮内膜症モデル病変では、子宮内膜を自家移植した腹膜組織に線維芽細胞と肥満細胞の浸潤とその周囲におけるコラーゲン線維の合成亢進により特徴付けられるが、クラリスロマイシンとテリスロマイシンはこの間質増生の形成を抑制した。さらに、この病変形成の抑制に伴ってインターロイキン-10(IL-10)のモデル病変組織における発現が亢進していた。以上の結果は、1)クラリスロマイシンおよびテリスロマイシンが子宮内膜症モデル病変組織における間質増生の形成を抑制すること、2)両化合物がモデル病変組織におけるIL-10の発現を亢進させること、3)IL-10は病変組織で発現亢進するが、病変形成を促進するのではなく過敏反応を抑制していることを示唆した。この結果は、子宮内膜が子宮外に到達した際にその周囲に誘導する反応を両化合物が抑制することを示した。ヒトにおける子宮内膜症患者の病変の主要因は、子宮内膜の子宮外組織への反応の誘導が生理のたびに繰り返され、蓄積されることであると考えられている。本研究の結果は、子宮内膜症患者に適応可能な新たな治療法の可能性を提示するものである。
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