グリシンベタイン(以下ベタイン)は、植物が耐塩性を獲得する上で非常に重要な適合溶質である。しかし、ベタイン輸送に関する分子機構は殆どが未知である。そこで本研究では、ベタイン蓄積植物であるオオムギを用いてベタイン輸送分子機構を解明することを目的とした。 昨年度、研究代表者は、オオムギからベタイン輸送体HvProT2 (Hordeum vulgare proline transporter 2)タンパク質について発現解析を行った。その結果、葉でも根でもタンパク質の発現が見られ、葉については加齢による発現量の違いは見られなかった。これはHvProT2遺伝子において見られた、古い葉において発現レベルが高いという結果と異なるものであり、HvProT2遺伝子が転写後発現制御を受けている可能性が示唆された。次に研究代表者は、オオムギの根では根端部分に多くのベタインが蓄積することに着目した。オオムギの根では側部根冠のみでHvProT2遺伝子が発現することから、オオムギは側部根冠にベタインを集中的に蓄積し、根端分裂組織を保護することで根の伸長を促進させると推察した。そこで研究代表者は、研究をさらに発展させるためにコロンビア共和国にある国際熱帯農業センター(CIAT)において半年間研究を行った。CIATは非常に多くのgenotypeや大規模な圃場を保有している。研究代表者は、様々なgenotypeを用いて根の根系形態についての解析を行い、環境ストレス時に根系が発達しているgenotypeのスクリーニングを行った。また、深根性に関して、その形質を決定すると予想される遺伝子の単離に成功した。
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