研究課題
特別研究員奨励費
受容体型チロシンキナーゼであるFGF受容体の基質タンパクで、アダプター分子であるFRS2ファミリーにはFRS2alphaとFRS2betaが存在する。FRS2alphaがFGFシグナル伝達の中心的役割を担っている一方で、FRS2betaに特異的なシグナル伝達、独自の生理学的機序に関してはいまだ多くが未解明である。我々は、すでにFRS2βが神経細胞内において小胞状に発現し、一部がリソソームと共局在すること(FEBS Lett., 583 : 807-814, 2009)、またFRS2βはEGF受容体ファミリーと結合性を持ち、EGFシグナルに対して抑制的な作用を持つこと(Oncogene, 29 : 3087-3099, 2010)などについて報告してきたが、本年度はFRS2βのさらなる機能解析のため、FRS2βに特異的な結合分子をLC-MS/MS Proteomics解析により同定を行い、新規に得られた結合候補分子の中からE3ユビキチンリガーゼであるCBLと結合性を持ち、細胞内輸送に関与することで知られているCIN85/CD2APファミリー分子に着目し、神経細胞内で内在性に発現しているFRS2betaとの相互作用について、さらなる検討を行った。CIN85/CD2APとFRS2βとの相互作用と、EGFシグナル抑制効果との関連について、種々の培養細胞、初代培養神経細胞と、分子生物学・生化学的検討、蛍光標識したタンパクの細胞内分子イメージング、ターゲットタンパクのSiRNAによるノックダウン、および細胞内分解阻害剤を用いて検討を行った結果、FRS2beta-CIN85/CD2AP-CBL複合体はリソソームでのEGF受容体ファミリーの1つである、ErbB2受容体のタンパク分解を促進することが確認され、受容体のタンパク量の減少によりErbBシグナルを抑制的に制御していることが明らかとなった。また初代培養神経細胞におけるFRS2betaのノックダウンの実験から、FRS2betaがErbB2のタンパク量を減少させる機能は、生理的には神経発生と関連しており、神経細胞の分化成熟に支持的に寄与している可能性が示唆された。
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Oncogene (In press)