研究概要 |
本研究の目的は,保存量が存在する可変形態型の身体を起点として,より複雑な固定形態型の身体へと拡張することで,生物の示す多様なロコモーション様式に通底する制御のからくりを数理的に解明し,大自由度ロボットの自律分散制御方策の設計論を確立することである.特に本研究では,ひも状型・多脚型のロボットを事例として採り上げ,固定形態型の生物において存在する神経系(情報的な大域的相互作用)の必然性に関して考察する. 平成22年度には,シミュレーション上および実世界にてクモヒトデ型(五放射相称形・五脚型)ロボットを構築し,固定形態型の身体において多様な振る舞いを生成する自律個間の協調に関して考察を行った.具体的には,振動性のみならず興奮性をも記述可能なActive Rotatorモデル,および真正粘菌の事例から得た力覚に基づく局所センサフィードバックを導入した,これらの方策を組み込んだ結果,各腕は周期的運動を示す振動性と非周期的運動を示す興奮性を時空間的に励起し,推進に寄与する腕や身体を支える腕などへ役割分担を自発的に生成し,誘引刺激に応じたロコモーションが可能となった.本結果は,シミュレーションのみならず実機においてもプリミティブながら確認されている. これらの結果は,複雑な身体を有する行動主体において多様な振る舞いを生成するためには,周期的振る舞いのみならず非周期的振る舞いをも陽に活用することの重要性を示唆している.また,保存量の存在しない固定形態型の身体においては,力学的相互作用に加え情報的相互作用が役割分担など自律個間の協調において重要な役割を果たすことを示している.
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