企業倒産の場合における労働関係の法理を研究し、我が国においては立法も不十分で民事一般法や倒産法、労働法といった分野ごとに規制がなされ、その相互関係も明確でない部分が多い。そこで、フランスにおける企業倒産時の労働関係について研究を進めたが、そこで重要なことは、集団的処理が可能な問題については、倒産手続を担当する商事裁判所と通常時から労働者を代表する企業委員会等がこれを担当して手続の迅速化を図り、集団的には処理できない個々の労働者の解雇の適法性といった問題については、別に労働審判所において処理がなされる。倒産手続の迅速性確保と労働者の利益保護の両立を考える上では、集団的処理と個別的な紛争の切り分けをどのように行うかが重要となる。我が国における問題点については、既に昨年度論文を公表したところであるが、本年度はフランスにおける制度の在り方と問題点を中心に研究を行ったものである。 そして、これまでの研究で得られた成果をもとに、特に倒産手続において処理される解雇の問題に関し、フランスの商事裁判所と労働審判所の役割分担を中心とした当該手続の在り方について日本労働法学会第119回大会(名古屋大学・愛知県)において、「フランスにおける企業倒産と解雇」として個別報告を行い、また日本労働法学会誌に投稿した。
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