研究概要 |
短時間で風速が増加する突風を受ける構造物においては,同じ風速レベルの一定風速下で作用する風力より大きな非定常風力が作用するが,その現象や非定常風力の特性についての体系的な解明はほとんど行われていない。平成22年度は,立ち上がり時間の短い突風時に構造物に生じる非定常空気力の発生要因と非定常風圧力特性の解明および一定風速からの突風時の非定常風力特性の解明を目的として以下の3項目について研究を実施した。1.立ち上がり時間の短い突風下で生じる流体慣性力が,楕円断面柱に作用する風力のオーバーシュート現象に及ぼす影響を準定常風力式と風洞実験および数値流体計算により検証した。その結果,風速の立ち上がり時間の無次元パラメータである「無次元立ち上がり時間」が非常に小さい場合には慣性力の影響が大きく,オーバーシュート現象の一因になるが,無次元立ち上がり時間が比較的大きい場合には,慣性力の影響は小さく,その他の要因によって引き起こされることを明らかにした。2.立ち上がり時間の短い突風を受ける陸屋根および切妻屋根模型の風圧力特性を突風風洞実験によって検証した。突風生成時に生じる風洞内の静圧勾配の影響を考慮した模型表面圧を計測する工夫を行い,各模型の表面風圧を計測した結果,立ち上がり時間の短い突風時に模型表面の各面において風圧力のオーバーシュート現象が生じ,模型表面各点のピーク風圧係数と無次元立ち上がり時間に強い関連性が見られることなどを明らかにした。3.一定風速から立ち上がり時間の短い突風が生じた時に楕円断面模型に作用する非定常風力の特性について突風風洞実験により検証した。その結果,一定風速からの突風時においても,風力のオーバーシュート現象が現れるが,突風の立ち上がり前の風速が高くなるほど,オーバーシュート現象が小さくなることなどを明らかにした。
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