本年度は、アラインと有機ハロゲン化物を用いた炭素一炭素結合形成を含む一群の新規多成分連結反応を開発し、従来の芳香環官能基化法(Friedel-Crafts反応・クロスカップリング・オルトメタレーション等)では入手困難であった多置換芳香族化合物群を直截的に合成できる実践的な芳香環隣接位ダブル官能基化法として確立することを目指し以下の研究を行った。 ブロモアルキンの炭素-ハロゲン結合へのアラインの挿入反応を鍵過程とするアライン2分子関与型多成分連結反応を開発した。具体的には銅触媒存在下、ブロモアルキンのsp混成炭素-臭素結合に2分子のアラインが挿入し、ブロモビアリール誘導体を一段階で与えることを見つけた。例えば、ベンザインに1-ブロモ-2-フェニルアセチレンを触媒量の臭化銅(II)存在下、DME中80℃で作用させると、ベンザインとブロモアルキンの2:1連結反応が進行し、2-ブロモ-2'-(フェニルエチニル)ビフェニルを収率52%で得ることができた。これはsp混成炭素-臭素結合に多重結合を挿入させた初めての例である。ブロモアルキンと同様に、プロパルギルブロミドやアリルブロミドにおいても反応は進行することも確認した。さらに、反応により生成したブロモアルキニルビフェニルは、パラジウム触媒存在下、アリールボロン酸との鈴木一宮浦クロスカップリング反応に適用可能であり、5-exo-dig環化を経て固体状態において発光挙動を示すAggregation Induced Emission(AIE)特性を有すジベンゾフルベン骨格へと変換できることを見つけた。
|