研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、ヒストンH3のバリアントやそれらと相互作用する因子群を、生化学的および構造生物学的手法を用いて解析し、H3バリアントおよびそれらの相互作用因子群によるクロマチン構造形成のメカニズムを明らかにすることである。これまでに、ヒト由来のH3について、8つのバリアントが報告されているが、それらのクロマチン形成に関する詳細な役割は未だ明らかにされていない。そこで、H3バリアントの生体内における特異的な機能発現は、それぞれの相互作用因子群によってなされていると考え、H3バリアントと相互作用する因子群を、リコンビナントヒストンを用いたプロテオーム解析法により探索した。その結果、新規ピストン相互作用因子としてヒトSPT2を同定した。ヒトSPT2は出芽酵母の転写因子SPT2と共通するSpt2ドメインを有するタンパク質であるが、機能未知のタンパク質であった。そこで、SPT2の機能解析を行うために、リコンビナントタンパク質として精製したヒトSPT2を用いた生化学的解析を行った。その結果、精製したヒトSPT2はコアヒストンと直接相互作用し、ヌクレオソームの形成を促進した。また、ヒトSPT2はDNAとも直接結合し、特に分岐したDNA基質に優先的に結合した。さらに、HeLa細胞を用いた免疫染色実験を行い、SPT2の局在解析を行った。その結果、SPT2は核小体領域に局在し、特にrRNAの転写を行うRNAポリメラーゼIと共局在した。次に、SPT2の生体内での機能を解析するために、SPT2欠損ニワトリDT40細胞を樹立し、細胞生物学的解析を行った。その結果、SPT2欠損細胞がRNAポリメラーゼIの阻害剤に対して著しく感受性を示した。以上の結果から、新規ヒストン相互作用因子として同定したSPT2が、これまで不明な点が多かった核小体領域のクロマチンのダイナミクスに関与することが考えられた。
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