研究課題
特別研究員奨励費
ステンレス鋼の不均一変形挙動と局所的なひずみの集中が照射誘起応力腐食割れ(IASCC)につながるき裂発生に及ぼす影響を調べるために、水素イオン照射したオーステナイトステンレス鋼の疲労試験を行った。また、粒界に集積する可能性のあるヘリウム(He)の影響についても調べた。照射損傷導入による不均一変形の発現により、微小き裂発生に要する疲労負荷繰返し数の減少が生じることが明らかとなった。また、き裂発生箇所とEBSD解析の比較により、4種類のサイトで微小き裂が発生することが明らかとなり、特にすべり線上では、照射によって発生割合が大幅に増加した。微小き裂発生要因として表面形状と塑性ひずみに着目した結果、照射材では表面形状が微小き裂発生の主要因となると考えられる。微小き裂発生までの表面形状の発達過程を調べた結果、入込みや突出しが形成され、その段差は飽和する傾向を示し、照射材ではより少ない繰返し数で段差が飽和することが分かった。照射材は繰返し荷重によるすべり変形が一部の転位チャンネルに集中し、すべり線の入込みや突出しの発達が促進され、その段差がある一定値に飽和した状態で疲労損傷が蓄積されることで微小き裂が発生すると考えられる。He非注入材は延性破壊であったのに対し、He注入材は濃度や焼鈍の有無によらず粒界破壊であった。注入後に焼鈍を行ったものにはHeバブルが粒内および粒界に観察された。引張試験において、降伏後に連続的なHe放出が検出され、最終的な破断の際に急峻なHe放出ピークが検出された。放出されたHeの総量は焼鈍の時間よりも、He注入量に強く依存していた。Heの影響により、粒界で選択に破壊が起こっていることから、不均一変形とHeの影響は、き裂発生において相乗効果となると考えられる。両者の影響を評価することでIASCC発生におけるそれぞれの影響を定性的ではあるが明らかにすることができた。
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Journal of Nuclear Science and Technology
巻: Vol.48, No.1 ページ: 130-134
Proc. of 14th International Conference on Environmental Degradation of Materials in Nuclear Power Systems (CD-ROM)