研究課題
特別研究員奨励費
冬季北半球の成層圏には北極周辺の強い西風で特徴づけられる極渦があり、その年々変動は赤道成層圏に存在する準二年周期振動(Quasi-biennial Oscillation : QBO)や太陽活動の11年周期の影響を受けて変化する傾向にある。成層圏の極渦の強化/弱化と関連して対流圏でも北極振動(Arctic Oscillation : AO)が変化する傾向があり、対流圏の気候を予測する上で成層圏のプロセスや成層圏対流圏結合のプロセスを理解することが重要と考えられる。本研究では、化学気候モデル(Chemistry Climate Model : CCM)と客観解析データを用いて、これら太陽活動やQBOが気候に及ぼす影響について、そのプロセスの解明を目指してきた。前年度までは太陽活動とQBOの影響を個別に調べたが、今年度は2つの要因を両方考慮し、成層圏QBOが極渦変動に及ぼす影響が太陽活動に伴いどのように変わるのか、また対流圏にどのように影響するのかについて調べた。モデル実験の結果と客観解析データを解析し、結果を50hPaのQBOの西風相と東風相、太陽活動の極大期と極小期により4つに分類し、それぞれ平均的な特徴を調べた。12月から1月にかけ、太陽活動極大期(極小期)でQBOが西風相(東風相)の場合に極渦の強化(弱化)傾向が見られた。これらのケースでは、極渦周辺においてQBOの応答と太陽活動の応答がそれぞれ似ており、QBOと太陽活動の応答が波と平均流の相互作用を受けて互いに強化されたと考えられる。また、対流圏においてもAOの変化に対応する東西風変化が見られた。客観解析データの結果では、特に日本周辺で変動が大きく初冬の気候への影響が示唆された。さらに冬季全体についても細かい時間スケールで調べると、強化(弱化)した上部成層圏の極渦が中高緯度で極向き・下向きに移動する特徴が見られた。
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