研究課題
特別研究員奨励費
心水症はリケッチアの一種Ehrlichia ruminantiumが原因となるマダニ媒介性感染症である。本菌はin vitroの継代培養で弱毒化し、生菌ワクチンとして有効であることが報告されているが、その弱毒化機序は不明である。さらに、流行地では免疫原性の異なる株の混在が示唆されており、効果的なワクチン処方には野外株の遺伝子型別が必須である。そこで、本研究では次世代シーケンサーを中心としたゲノム解析技術によりワクチン株の弱毒化機序の解明と野外流行株の系統解析を目的に研究を進めた。ヤギに強毒性を示す野外分離株であるGardel株と、それを親株として得られた弱毒Gardel株を材料に、次世代シーケンサーを用いた全ゲノム配列の解読を行った。2株間のゲノム比較により、合計16箇所のゲノム差異が弱毒化に関連しうるゲノム変化として検出された。今後、発現遺伝子ならびに翻訳蛋白質の解析により、宿主への病原性を担う遺伝子の特定が可能となり、遺伝子ノックアウト技術を応用することで様々な野外流行株に対するワクチンの開発につながることが期待できる。アフリカのほぼ全域に由来する実験室分離株とウガンダの心水症流行地で採集されたエーリキア感染マダニを対象に、複数のハウスキーピング遺伝子の塩基配列に基づくMLST法により解析を行った。その結果、同一地域において地理的拘束をこえた様々な遺伝子型の混在が示された。また、複数の株間での大規模な遺伝子組換えが検出され、本菌の重要なゲノム改編メカニズムであることを明らかにした。また、より簡便・迅速な解析手法としてゲノム全域に点在する繰り返し配列をマーカーとするMLVA法を新たに開発した。既存の型別法であるPCR-RFLP法より高い多型識別能力が確認され、流行地における優勢遺伝子型群の特定が可能であり、ワクチン株を選定する上で有用な遺伝子型別法であることが示された。さらに今後、野外ワクチネーション試験において遺伝子型とワクチン効果等の臨床像の相関性を解析することで、本菌の病原性を規定する遺伝的背景の解明に活用されることが期待される。
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