フィンランドの教員養成では実践研究者として教師を養成することを狙いとしているため、学生に対して研究方法論を獲得することや、論文執筆を課すことで研究的姿勢を身につけることを求めている。先行研究では、これらの学習についての効用を教師が感じているか否かについて明らかにされていなかったため、昨年度3月にヘルシンキ市の小学校教師を対象にアンケート調査を実施した。このアンケート調査の結果についての考察を日本比較教育学会および世界比較教育学会で発表した。またフィンランドの教員養成の特徴である修士レベルでの教員養成がされ始めたのは1970年代末であり、現在のフィンランドの教員養成制度を理解するためには1970年代に着目し、当時の社会的背景も踏まえてなぜこのような制度が実現可能になったかという点を考察する必要がある。この点については、論文「現代フィンランド教員養成の起源」において明らかにした。その結果、現在のフィンランドの教員養成の大きな特徴といえる修士号取得は当時の高等教育改革の副産物であるということが分かった。その他の修士号取得を後押しする要因としては初等教員と中等教員との資格格差是正にむけての取り組みがあったことが明らかとなった。また教育実習を実践研究の場としても機能させていることもフィンランドの教員養成の特徴であるのだが、これが可能となった背景にはフィンランドの教育学の発展経緯に特徴があることを指摘した。この他マクロな視点からのフィンランドの教師教育についての研究もおこなっており、第2回東アジア教師教育研究国際大会では、シンポジウム発表という形式で"Teacher Education Research-From Japanese Points of View"というテーマで教師教育研究の比較教育学的な視点での研究をおこなっている立場からの発表をおこなった。
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