研究概要 |
本研究は,湖沼におけるリン循環の定性的,定量的な把握を行うために,現地調査・室内実験をメインに研究を遂行してきた.本年度は,以下の研究内容について行った. 第一に,浅い湖沼の代表である手賀沼において,現地観測を行い,懸濁物に付着するリンの画分を計測した.特に,水柱における鉛直分布を把握し,その定量化を行った.第二に,手賀沼の泥を用いて,室内実験を行い,異なるpH条件化におけるリンの遊離量・遊離速度を計測した. 本研究の最も重要な成果として,浅い湖沼における懸濁物に付着する藻類利用可能態リンを定量化できたことが挙げられる.藻類利用可能態リンは,高いpHで遊離する傾向にあるが,手賀沼では,それは懸濁物に付着する無機態の殆どを占めており,懸濁物中のリンは,ほぼ藻類利用可能であると推察された.特に巻き上がりが起こった際には,懸濁物中のリンの内,藻類利用可能態のものは極めて大きく上昇する傾向を示しており,これは,手賀沼における藻類に利用可能なリンのマスバランスに影響を与えるものと推察された.それに対し,藻類に利用不可能態リンは,極めて少量であった. 主要な研究成果の第二点目は,底泥内のリンの遊離速度を,pH別に計測し,定量化した点である.pHは,藻類の増殖に影響を受け,リンを遊離させると考えられているが,本研究では泥の粒径が与えるリン遊離量への影響を定量化した.その結果,細かい粒径のものほど,高いpHで遊離する傾向が示された.
|