研究概要 |
Pit-1wの転写活性化能を明らかにするため,マウスPit-1w発現ベクターを作製し,成長ホルモン(GH),プロラクチン(PRL),甲状腺刺激ホルモンβサブユニット(TSHβ)遺伝子のプロモーターの転写活性に与える影響をHEK293細胞においてレポーター解析により調べた。その結果,Pit-1wはPRLのプロモーターの転写活性を有意に増加させたが,その増加率はPit-1αと比較して低かった。一方,Pit-1wはGHおよびTSHβのプロモーターの転写活性を増加させなかった。これらの結果は,ニワトリPit-1w発現ベクターを用いたレポーター解析の結果と一致しており,Pit-1wの機能は鳥類と哺乳類の間で共通であると考えられた。 精巣におけるPit-1wの生理的機能を明らかにするため,1,2,3,4,5,6,8,10週齢のICR系統マウスの精巣においてGH,PRL,TSHβのmRNA発現とPit-1wのmRNAおよびタンパク発現との相関を調べた。GHおよびTSHβの発現はPit-1wの発現パターンとの相関が見られなかった。PRLの発現は1,2週齢では低く,3週齢以降に急上昇するというPit-1wと同様の発現パターンを示した。Pit-1mRNA発現細胞を同定するために,8週齢のICR系統マウスの精巣においてin situ hybridization法を行ったところ,一部の精原細胞および全ての精母細胞,精子細胞において陽性シグナルが検出され,特に精母細胞で強い陽性シグナルが得られた。精母細胞および精子細胞は2週齢から3週齢の間に増加することが知られており,その時期はPit-1w mRNAの発現が急上昇する時期と一致する。以上のことから,マウスの精巣においてPit-1wはPRLの発現を制御するとともに精母細胞への分化以降の精子形成に関与する可能性が示唆された。
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