研究課題
特別研究員奨励費
エンドセリン受容体はエンドセリン-1をリガンドとするGタンパク質共役型受容体であり、A型受容体(ETAR)とB型受容体(ETBR)の二種類のサブタイプが存在する。私はこれまでの研究の結果、顎顔面の形態形成においてETARとETBRの互換性が乏しい理由として、ET-1結合後の両受容体の細胞内動態の違いを明らかにしてきた。これに加えて両受容体のリガンド結合直後の脱感作の違いを比較するため、各受容体を過剰発現させた培養細胞にET-1を二度添加し、細胞質内のカルシウム濃度を経時的に測定したが、両者に有意な差は観察されなかった。このことから脱感作については両者に差が無いことが示唆された。近年様々なGPCRと古典的Wntシグナル伝達経路との間にクロストークが存在することが報告されており、この経路の異常が癌の進展や細胞の分化において重要な役割を担うことが明らかにされている。エンドセリン受容体がWntシグナル伝達経路とクロストークするか否かを検討するためにHeLa細胞とP19細胞においてET-1刺激によるβカテニンの転写活性を調べたところ、HeLa細胞においては有意な差が見られないのに対して、P19細胞においてはET-1刺激によってβカテニンの転写活性が低下した。さらに、この転写活性の低下はET-1刺激によって誘導される細胞質内のカルシウムが引き起こすもので、βカテニンをリン酸化し、分解に導くGSK3βの活性とは無関係であることが示唆された。今後培養細胞を用いてβカテニンの転写活性が抑制される分子メカニズムをさらに詳細に明らかにすると共に、マウス個体においてET-1/ETARシグナルが実際に古典的Wntシグナル伝達経路に干渉するか否かを検討することによって、顎顔面の形態形成におけるETARの細胞質内シグナル伝達経路の解明に寄与することが期待される。
すべて 2011 2010 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) 図書 (1件)
Development
巻: 137 ページ: 3832-3833
医学のあゆみ
巻: 233 ページ: 846-850