研究概要 |
本研究はNi耐性植物であるタカネグンバイから単離されたNi耐性に関与する養分トランスポーターTjZNTの機能を解明することを目的の一つとしていた。本年度、異種発現系を用いた詳細な検討によりTjZNT1のNi耐性能は細胞外へのNi排出に由来することが新たに示された。前年度までの成果と合わせて考察した結果、TjZNT1は維管束において地上部への亜鉛の分配を担うだけでなく、維管束で濃縮された過剰なNiをアポプラスへ排出していることが予測された。ただし前年度に開発したタカネグンバイ形質転換系を利用したTjZNT1ノックダウン植物の作成は未だ成功していないため、Ni耐性の関与を示す直接的な根拠はいまだ得られておらず、現在問題解決に努めている。また、基質選択部位として同定されたTjZNTのN末端領域(Nishida et al., 2011)はNi排出能にも関与していることが示唆された。本発見により、今後は構造レベルでTjZNTのNi耐性の解明が期待できる。 一方、シロイヌナズナを用いて、Niの過剰吸収の原因となるZIPトランスポーターとTjZNTとのスワッピングによりNi低吸収性植物を作出することを本研究のもう一つの目的としていた。今回、Feの取り込みを担うZIPトランスポーターIRT1をNi輸送体として同定し、IRT1のノックアウトにより植物体中のNi蓄積量が低減することを見いだした(投稿中)。ただし、さらなるスクリーニングにより数種類のZIPトランスポーターでNiの吸収活性が認められ、ZIPによるNiの過剰吸収経路は一つではないことが明らかとなった(論文作成中)。そのためTjZNTとの置換体の作出に先立って現在はZIPによるNlの過剰吸収機構の解明を試みている。今後、この成果をもとにNi低吸収性植物作成技術の開発に努めていく。
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