研究概要 |
本研究では生物生息を目的とした干潟環境を設計する手法の構築を目標とし,コアマモ藻場・干潟複合生態系を構成する因子間について1)コアマモの安定同位体・脂肪酸組成の特徴についてまとめ,さらに2)コアマモ藻場・干潟間における懸濁態有機物の輸送について検討を行った. 1)コアマモの炭素・窒素安定同位体・脂肪酸組成の特徴については,日本各地におけるコアマモを採取し,地域差や部位差,そして同じアマモ属のアマモと比較して,その特徴を明らかにした.コアマモはアマモと比較して高い炭素安定同位体比を持っていること,今まで陸上植物の指標として使われていたLCFAを含んでいることが示された.このことは,沿岸域における食物網解析において基礎的知見となり,この研究領域の発展を促すものである.この結果の一部はJournal of Water and Environment Technologyにおいて6月に発表予定である(掲載決定済み). 2)今までの研究から,コアマモ由来の有機物が干潟に広く分布している可能性が示唆されたため,コアマモ由来の有機物の輸送経路を検討した.その結果,干潟と比較してコアマモ藻場では流速が著しく低下していることが明らかとなり,干潟内においてコアマモ藻場は有機物を供給する場としての役割を担っていることが示唆された.既往研究では,流速の低下に伴い藻場内は有機物の堆積の場としての役割を担うことがしばしば報告されている.既往研究との違いについては,今後の研究課題である. また夏季以外の食物網についての研究は今後の課題である.
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