研究課題
特別研究員奨励費
ips細胞は再生医療に向けた応用が強く期待されている。患者から作出したips細胞を用いれば、倫理的および免疫的に問題のない、移植用の組織や細胞が作成可能になる。ips細胞を安定に分化させる技術の開発は医療応用において重要な課題であるが、個々のips細胞株の分化傾向が一様であるかどうか、また異なる場合にそれを平準化する方法があるかは不明である。我々は、3株の異なるマウスips細胞の心血管分化効率を解析するとともに、分化効率の改善方法についても模索した。iPS細胞を平面培養下で自発的に分化させ、時間経過を追って心筋分化効率を測定した結果、Es細胞や他のiPs細胞株に比べて有意に分化効率の低いiPs細胞株(20D17)が存在することが明らかになった。これまで、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤トリコスタチンA(TSA)がES細胞の心筋分化を促進することが報告されている。そこで、上記ips細胞にTSAを投与したところ、ES細胞同様の心筋分化促進作用が観察された。TSAの効果は20D17株でも認められ、未分化マーカーであるNanog陽性細胞の数が減少し、心筋特異的遺伝子Nkx2.5のmRNA量が他の細胞株と同程度にまで上昇した。また、TSAの投与によって20D17株の核内HDAC4タンパク量も減少し、これらの効果が20D17株の心筋分化に寄与していると示唆された。また、別のHDAC阻害剤であるバルプロ酸もTSA同様の心筋分化促進作用を持つことを認めた。これらのHDAC阻害剤を用いることで、ips細胞の心筋分化を亢進し、細胞株間の相違や患者の個体差を平均化できる可能性がある。
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