研究課題/領域番号 |
09J06380
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 正裕 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2009 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2009年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 宇宙背景放射 / インフレーション / 超弦理論インフレーション / 共鳴 / アインシュタイン・エーテル理論 / Bモード偏光 / 非正準運動項 / パワースペクトル / アインシュタイン-エーテル理論 / 物理定数の時間変化 / 原始密度揺らぎ / 構造の起源 |
研究概要 |
本研究課題は、宇宙背景放射(CMB)非等方性の起源・性質を理論的・観測的に明らかにすることを目的としているが、本年度は特に近年の精密観測によって見つかりつつあるCMB温度揺らぎパワースペクトルの局所的増幅を自然に実現する理論を構築する研究を主に行った。CMB揺らぎは初期宇宙のインフレーション中に生成された量子揺らぎを起源とすると考えられている。本研究では、インフレーション中に(インフラトン場とは別の)重たい場が存在し、インフラトン場と特定の微分結合を持っていた場合に、インフラトン場の揺らぎの方程式が、いわゆるマシュー方程式の形に従うことを明らかにした。重たい場がインフレーション中に振動した場合、共鳴現象によって、重たい場の質量に対応するスケールで揺らぎが(波数空間で)局所的に増幅されることを確認し、この増幅がCMB観測で見られるパワースペクトルの増幅を説明し得ることを明らかにした。特に、本モデルでは揺らぎの増幅の幅が非常に細いことが特徴的かつ画期的であるが、これは重たい場の振動が急激に減衰することを利用している。素粒子の統一理論として有望な超弦理論においては、多くのスカラー場が登場するが、特に余剰次元方向の自由度の質量が大きくなる傾向にある。このモードと、本モデルに必要なインフラトン場との微分結合が、超弦理論に基づくモノドロミーインフレーションモデルに自然に出現することも見出した。適切なパラメータ領域で観測的に好まれる揺らぎの増幅が起ころことも確認し、超弦理論と宇宙論的観測を繋ぐ新たな手掛かりとして非常に有望であると考えている。 また、近年中の観測が見込まれるCMBのBモード偏光に関しても、アインシュタイン・エーテル理論という修正重力理論において大振幅の生成が可能であることを見出し、論文としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、現在進行形で進展中の観測的宇宙論に対して、理論的な立場から精密化を推進することであるが、観測的に発見されつつある現象を自然に説明する理論を構築することが出来たという点では重要な進展があったと考えている。しかし、観測データの解析によって観測結果をより詳細に分析する方向性の研究は不十分であったため、当初の計画を完全に達成できたとは言い難い。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の大きな動機の一つとなっていたCMB観測データに見られる異常現象に関して、それを自然に説明する理論の大枠を提案することは出来たため、今後はこの理論モデルを精緻化し、具体的なインフレーションモデルに落とし込んでいく方向性が考えられる。また、来年以降、新たなデータが公開される予定であるため、標準的なデータ解析手法とは異なる視点で、揺らぎの本性を明らかにするためのデータ解析手法を考案する必要がある。最新の統計学的手法や、新たな視点からの解析手法を導入する方向性も、重要であると考えている。
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