研究課題/領域番号 |
09J06398
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
物性Ⅰ
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山崎 高幸 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2009 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2009年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 標準理論を超える物理 / ポジトロニウム / CP対称性の破れ |
研究概要 |
研究代表者は、超対称性事象の探索を目的とした研究として、LHC加速器およびATLAS検出器を用いた実験と並行してポジトロニウムを用いた小規模実験を行っている。これは電子・陽電子による重心エネルギー1MeVの衝突型加速器実験に相当し、未知の新粒子を探索するのに適している。特に、基底状態のパラポジトロニウムとオルソポジトロニウムとのエネルギー準位差(超微細構造)は、実験値と理論値の間に3.9σもの有意なずれが報告されており、このずれが実験の系統誤差によるものでなければ、標準理論を超えた未知の新粒子の存在を表す。研究代表者は現在、このずれを検証すべく、過去の実験とは異なる新たな手法を用いてポジトロニウム超微細構造を測定する実験を行っている。過去の実験は強い静磁場を用い、ゼーマン効果を利用することで間接的に超微細構造を測定していたが、ポジトロニウムが生成される広い領域にわたって一様な磁場を印加することは極めて難しく、最大の系統誤差であった。この不定性をなくすため、超微細構造のエネルギーに等しい203GHzのミリ波を直接照射する手法を採用した。この手法はシンプルではあるが極めて高強度なミリ波源が必要とするため、過去に例がないものである。光源として300Wの出力を持つジャイロトロンを用い、その出力をファブリー・ペロー共振器内に蓄積することで約10kWのパワーを達成した。この光学系を用いることで直接遷移を5.4σの有意性で世界で初めて観測した。また、遷移量のパワー依存性を確認し、得られた遷移量および蓄積パワーから遷移確率を世界で初めて測定した。得られた値は理論値と無矛盾である。今後は、周波数を変化させた場合の遷移量の変化を測定することで世界初のポジトロニウム超微細構造の直接測定を目指す。最終的には測定精度を10ppmレベルまで向上させ、実験値と理論値とのずれを検証することで標準理論を超える物理を探索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は素粒子物理反応を詳細に研究することで超対称性などの標準理論を超える物理現象を探索することである。このような事象は標準理論からのずれとして観測されるため、バックグラウンドを正確に理解し、精度の高い研究を行う必要がある。これまでの研究により、実験手法はほぼ確立されており、おおむね順調に進展しているが、最終的に必要な精度に到達するためには今後の改良・研究が必須である。
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今後の研究の推進方策 |
既に最も困難であると考えられた高強度ミリ波の蓄積に成功し、ポジトロニム超微細構造間の遷移事象を観測し、更にその性質を確認した。今後は系統誤差を抑えるため実験装置の改良を行い、光源の周波数を変化させた場合の遷移量の変化を測定する。1年以内に300ppm程度の精度で世界初の直接測定実験を行う。しかし、目的である標準理論を超えた物理の探索を行うには、精度を10ppm程度まで向上させる必要がある。これには光源の更なる安定化および相対パワー測定精度の向上が必要不可欠であるため、これらの研究を進める。
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