研究概要 |
本研究では、申請者らが構築した胚性幹(embryonic stem : ES)細胞からの内皮細胞分化誘導システムを用いて、血管分化多様化機構、特に新たに見出したcAMPの作用機構を解明を試みた。 血管内皮細胞分化におけるcAMPシグナルの役割 活性化型PKA (CA-PKA)発現をFlk1陽性細胞において発現させたところ、内皮細胞分化や3次元的血管構造形成が著しく促進された。CA-PKA発現により内皮細胞分化が誘導され、Flk1-VEGF165-NRP1タンパク複合体形成も認められた。cAMP/PKAシグナルは血管前駆細胞のVEGFに対する感受性を向上させることで、内皮細胞分化を促進することを明らかにした(Blood,114:3707-3716,2009)。 動脈内皮細胞の運命決定機構におけるcAMPシグナルの役割 Flk1陽性細胞へのVEGF及びcAMPの添加により認められた動脈内皮細胞誘導は、□-cateninとNotch Notchを同時に活性化することによりcAMP非存在下においても再現された。RBP-J-Notch-□-cateninが動脈内皮細胞特異的にタンパク複合体を形成していた。cAMPシグナル下流の動脈内皮細胞誘導機構を明らかにした(J Cell Biol,189:325-338,2010)。 (3)オピオイドの内皮細胞分化及び血管走行制御における新しい意義 従来神経機能制御に関与しているKappaオピオイド受容体(KOR)がcAMPに抑制的に作用することにより内皮分化及び血管形成を抑制していることを明らかにし、オピオイドの新しい神経外作用、を明らかにすることに成功した(Blood,in press)。 このように、cAMPを中心とした新しい血管分化多様化機構を次々と明らかにすることに成功し、当初の期待以上の研究の進展を認めている。
|