研究課題/領域番号 |
09J06697
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理
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研究機関 | 京都大学 (2010) 東京大学 (2009) |
研究代表者 |
西山 陽大 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2009 – 2010
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研究課題ステータス |
完了 (2010年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2009年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 高エネルギー重イオン衝突 / クォーク・グルーオンプラズマ / 量子非平衡過程 / Kadanoff-Baym方程式 / 相対論的原子核衝突 / 数値計算 / 熱平衡化 / Kadanoff-Baym |
研究概要 |
本研究の目的は高エネルギー原子核衝突実験で発生したグルオンに対し、その量子非平衡現象を記述し、その熱平衡化に至る過程を追跡することである。現在、グルオンの熱平衡化に対しては古典的なアプローチでは全く考えられないような早い熱平衡化現象が認められており、問題になっている。申請者は、グルオン場の量子非平衡過程の数値計算と強い古典場の崩壊過程の数値計算を実現させた。 まず、申請者はグルオンの量子非平衡過程を記述するKadanoff-Baym方程式による数値計算を世界で最初に実現させた。計算はまず、空間2次元の系で行い、古典的には決して起こりえないが、量子的な過程を考えることによって始めて実現される熱平衡化現象が存在することを突き止めた。この結果はこれまでに考えられなかった量子的過程による熱平衡化であり、高エネルギー重イオン衝突実験で発生したグルオンの熱平衡化現象に対しても、その早い熱平衡化を説明する方策になる可能性がある。さらに申請者は、現実的な衝突実験を計算機上で再現するため、空間3次元の系での数値計算を実現させた。これにより、現実のグルオン系の熱平衡化に対して、量子的なアプローチが可能となった。実際に計算を行ったところ、量子的な過程による熱平衡化の時間が実験で指摘されている通り、十分早い可能性があることが見つかった。これは、これまで10年間謎とされてきたグルオンの早期熱化問題に対し、1つの解答を与えることができる結果である。 また、申請者は強いグルオンの古典場が存在する場合を考慮するため、スカラー理論において、古典場と量子的な揺らぎが混在している場合の非平衡過程の数値計算を実現させた。この数値計算は原子核衝突実験のみに留まらず、初期宇宙の再加熱現象や、物性理論におけるBose-Einstein凝縮現象およびFermi流体などに応用可能なものである。
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