研究課題/領域番号 |
09J06753
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
固体地球惑星物理学
|
研究機関 | 東北大学 (2011) 国立極地研究所 (2009-2010) |
研究代表者 |
豊国 源知 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教
|
研究期間 (年度) |
2009 – 2011
|
研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
|
配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2011年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2010年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2009年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
|
キーワード | 地震学 / 数値計算 / 全地球モデリング / 地震波形 / 極域 / コアフェーズ / 南極氷床 / PKJKP / 地震波 / 差分法 / 非弾性減衰 / 地球中心 / 特異点 / Jフェーズ / 理論波形 |
研究概要 |
研究最終年度の本年は、昨年度から引き続き南極および北極の観測網で記録された遠地地震波形記録を用いて地球内核中をS波として伝搬するコアフェーズ「PKJKP」の検出を試みたが、検出には至らなかった。本課題のスタート直前には、PKJKPの検出を報告する論文が2編出版されていたが(Cao et al., 2005, Science; Wookey & Helffrich, 2008, Nature)、本年には検出可能性に否定的な研究が報告された(Shearer et al., 2011, GJI)。極域氷床上の地震波形データには、氷や雪の影響で水平動成分に特にノイズが多く、検出はさらに困難なものと考えられる。 以上のことから本年は、極域の氷床上での地震波形データに氷床がどの程度影響を与えるかを定量的に評価することに研究の主眼を置いた。厚さが3km一定で、密度・地震波速度も一定の簡単な南極氷床モデルを作成し、ピュアな横ずれ型震源から励起される卓越周期30sのP波・S波の計算を行ったところ、氷床の効果はほとんど見られないことがわかった。地震波の鉛直成分の空間解像度は波長の1/8程度以上であることが知られているが、周期30sではP波・S波の波長がともに氷床の厚さに比べて長すぎるため、氷床の影響は見られなかったものと考えられる。よって30sよりも短い周期で計算を行う必要があるが、現在の計算機環境では30sの計算に約5日要しており、単純に周期を短くすることは実質上不可能であった。そこで本年は、シミュレーションの際にS波のみを励起する震源(トルク型震源)を用い、方程式のP波に関する部分を落とすことと、S波が地球の外核以深を伝搬しない性質を利用して計算領域を縮小することで、S波のみであるが30sより短周期での計算を実現した。卓越周期60s,30s,20s,10sの4つのケースで理論波形計算を行った結果、60sと30sでは氷床の影響がほとんど見られなかったのに対し、20sでは氷床上の観測波形に1.4倍程度の顕著な振幅の増幅が現れた。また10sの場合は1.6倍強のさらに顕著な増幅に加え、氷床内部の多重反射を反映したと考えられる後続波が見られることがわかった。振幅の増幅は、基盤岩の上にやわらかい堆積物が乗っている場合と同様の原理である。今回の計算により、氷床上で観測された30s以下の短周期地震波形では氷床の影響が顕著になることと、影響のオーダーを明らかにすることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の目標であったJフェーズの検出は、Jフェーズそのものの振幅が小さいことや南極氷床上の地震波形記録のノイズが大きいために実現できなかった。しかし本研究課題が契機となり、氷床上に置かれた地震観測点による観測波形記録に、氷床がどのような影響を与えるかを定量的に評価する研究を進めることができ、一定の成果は得られていると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は氷床や地表面の地形も考慮してさらに短周期までの計算を行い、より定量的な氷床の影響の評価を行っていきたい。また本研究課題がきっかけとなり、申請者は今年度グリーンランド氷床中央部に日米共同の観測点「ICE-S」を設置する観測に日本隊のメンバーとして参加しており、今後も毎年一回の観測に参加予定である。北極における氷床上の地震観測は、温暖化に伴う氷の融解や、グリーンランドの地下構造、地球深部構造を調べるうえで重要な位置を占めている。直近では2012年6月にデータ回収を行う予定であり、今後このデータを使用した北極地方の地震波の解析も鋭意進めていきたい。
|