研究概要 |
本研究では、4d,5d遷移金属を用いて物質を合成することにより、4d,5d電子系の物性を開拓することを目的としている。4d,5d電子系はスピン軌道相互作用・電子相関・結晶場の複合物性が期待できる有望な舞台である。 1.4d遷移金属ニクタイド RuPとRuAsにおける金属絶縁体転移の発見 4d遷移金属ニクタイドにおいて、構造相転移を伴う新規金属絶縁体転移を発見した。これまで4d遷移金属ニクタイドは物性研究の対象として注目されてこなかったが、本研究での金属絶縁体転移の発見により、4d遷移金属ニクタイドが多様な物性を示し、物性研究の舞台として有望であることが示された。この金属絶縁体転移は結晶の構造相転移を伴っており、スピン・軌道の自由度が4d,5d電子系においても重要な役割を果たしていることが明らかになった。 2.新超伝導体Rh置換RuP,RuAs,とRuSb 上述の金属絶縁体転移を示す4d遷移金属ニクタイドにRhを置換することで、超伝導を発現させることに成功した。超伝導転移温度はそれぞれ、(Ru,Rh)Pで3.7K(Ru,Rh)Asで1.8KさらにRuSbで1.16Kと低いが、相転移の臨界点における超伝導という観点から、非常に興味深い特徴を持つ発見といえる。臨界点における超伝導には、高温超伝導体などが含まれ、学術的にも、実用面からも重要な分野である。特に今回の超伝導は、非磁性絶縁体相の臨界点における超伝導という、これまでに報告のない新たな分野である可能性があり、重要な発見であると考えられる。
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