研究概要 |
絶滅が危惧されるウミガメ類の種の存続と人間活動との共存の為には,ウミガメ類の基礎生態情報を集積すると同時に、人間活動がウミガメ類に及ぼす影響を知る必要がある。平成22年度は当初の予定通り、三陸沿岸域に来遊する個体のモニタリングとデータロガーを用いた行動調査を実施した。また漁業活動が活発な三陸沿岸域における行動と比較する為、人間活動が極めて少ない海域におけるウミガメ類の行動調査も実施した。 三陸沿岸域におけるモニタリング調査では、夏期にアカウミガメ(Caretta caretta)36個体、アオウミガメ(Chelonia mydas)7個体とクロウミガメ(Chelonia mydas agassizii)2個体の混獲を確認し、計測と標識放流を行った。これまでの標識放流の結果、三陸沿岸域は亜成体および成体サイズのアカウミガメが定期的に来遊する摂餌場であることが明らかになった。 データロガーは観察が困難なウミガメ類の海中行動を調べるのに有効な手段である。平成22年度は海中行動を三次元的に再現可能な地磁気加速度データロガーとウミガメ視点の画像を記録するデジタルスチルカメラロガーを組み合わせた調査を行った。その結果,餌生物である底生生物やホタテの養殖棚などの人工物が画像データによって確認され、現在行動データと合わせて解析中である。また、これまでは1日未満の短い期間の行動データしか得られなかったが、人工衛星型発信器と地磁気加速度データロガーを組み合わせ、より長期間の行動データを得ることに成功した。 また昨年度までに実施した行動調査のデータの解析を行った結果、アカウミガメが視覚を頼りにクラゲ等の浮遊性生物を補食している可能性が示唆された。今後は、平成22年度のデータも加えて解析を行い、論文を執筆する予定である。さらに、人間活動が極めて少ないコモロ諸島周辺海域においてもウミガメ類の行動データを取得し、漁業活動が活発な三陸沿岸域における行動との比較することを目的にデータを解析中である。
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