研究課題/領域番号 |
09J07752
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
化工物性・移動操作・単位操作
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上村 佳大 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2009 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2011年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2010年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2009年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 多孔質材料 / 吸着 / 化学工学 / 結晶 / グリーンケミストリー / 触媒 / 低環境負荷 / 材料プロセス / 廃水処理 / シリカ材料 / ゾルーゲル法 / 非晶質材料 / 有機-無機ハイブリッドガラス / 単位操作 / 固液抽出 |
研究概要 |
ゼオライトは結晶性多孔質アルミノシリケートであり、その高い安定性、吸着特性、細孔容積から、有価物回収や汚染物質除去プロセスに応用できると考え、今回は主にゼオライトの合成及び物性評価、そして低コスト・低環境負荷でのゼオライト合成プロセスの確立を対象としたものを報告する。ゼオライトはシリカ源、アルミ源、アルカリ源、水及び有機構造規定剤(organic structure-directing agent;OSDA)を混合して反応混合物を調製し、これをオートクレープ内で高温・高圧下で水熱反応させて合成される。この時、OSDAの種類、反応混合物組成、反応条件及び反応操作を変化させることにより生成結晶相が制御され、これまでにbeta、ZSM-11、ZSM-12をはじめとする工業的価値の高いゼオライトが合成されてきた。これらのゼオライトを合成するためにはOSDAが必須であり、同時に新しいOSDAを用いた新規構造ゼオライト合成の試みも継続的に行われている。しかしながら、現状ではOSDAの構造はより複雑化し高価なものへと変化しているばかりでなく、OSDAを用いる従来方法は有機物含有廃液の処理や焼成時の排ガス処理などが不可避であるという欠点があり、ゼオライトの大量生産においてプロセスの煩雑化と高い環境負荷の主要因となっている。このような背景から、本研究では種結晶添加法によってOSDAを用いずに種々のゼオライトを合成することを試みた。種結晶添加法はOSDAを含まない反応混合物に予めOSDAを用いて合成したゼオライト種結晶(焼成品)を少量添加して水熱合成を行い、種結晶と同一構造を有するゼオライトをOSDA-freeで合成する新しいアプローチである。種結晶添加法によってこれまでにbeta、ZSM-11、ZSM-12ゼオライトの合成を行い、さらにこれらの生成物をそれぞれ種結晶として利用し、反応混合物に再度添加することで、種結晶と同一構造を有したゼオライト(グリーンゼオライト)を結晶化させることに初めて成功した。また実用化の面から、合成プロセスにおける種結晶の組成と添加量、反応混合物組成と生成物の関係の詳細な検討を行い、種々のゼオライトにおける最適合成条件を見出した。以上の結果は、グリーンケミストリーに基づいたゼオライトのOSDA-free合成プロセス確立のための重要な知見になると考え、国際学術雑誌への投稿を行った後、国際及び国内学会においてその成果を報告した。種結晶添加・OSDA無添加法の最大の魅力は優れた特性を有し、工業的価値の高いゼオライトを低コスト・低環境負荷で合成できる点である。しかしながら、betaは前記した条件では収率向上が課題である。また、ZSM-12については細孔特性の改善が必要である。さらに、得られるゼオライトの応用範囲を拡大するためには、構造破壊を伴わずにSi/Al比を増大させる方法の検討も必要である。今後はこれらの課題について検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
報告者は工業的価値の高いベータ型、MTW型、MFI型、MEL型ゼオライトらをより環境負荷の低い条件下で合成するプロセスの確立にも貢献し、多くの国内・国際学会においてその成果を報告した。また研究室の運営に貢献し、また海外からの研究員との共同研究にも積極的に従事した。今後も更なる研究成果をあげ、学術論文に投稿、発表していく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は得られた多孔質材料の大量合成技術、モジュール化、膜化といった技術の開発に取り組み、それをシステム化することで実用化を目指した研究を遂行していく予定である。同時に得られた成果を学術雑誌、特許申請、国内・国際学会で報告する。
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