研究課題
特別研究員奨励費
研究背景と目的:天然の岩石は一般的に複数の鉱物の集合体であるため、体積分率の多い鉱物(一相目)のみならず体積分率の少ない鉱物(二相目)が加わった多相系における岩石の振る舞いを調べることが重要となる。本研究はマントルの代表的な鉱物であるフォルステライト・エンスタタイト二相系において、粒径・粘性と二相分率の関係調べ、天然の岩石に応用することを目的とした。結果、および、考察:粒成長実験フォスルテライト-エンスタタイト量比の違う試料を用いて粒成長実験を行った。結果、二相分率が増える程、粒径は小さくなり、粒成長速度は遅くなる事が分かった。これは、二相分率が増加することにより、一相目の粒成長が阻害されるZener則により説明することができる。また、実験から得られた二相分率と粒成長の関係は、既存の粒成長モデルに鉱物の物性値を代入した、二相分率と粒成長速度の関係の理論値とよく一致することが分かった。つまりこの理論式を使い鉱物物性値が分かれば、二相分率の関数として粒成長を定式化する事が示唆された。変形実験フォスルテライト-エンスタタイト量比の違う試料を用いて、変形中のひずみ速度と温度を変化させた大気圧一軸圧縮試験を行った。まず、各試料の歪速度と粒径・応力・温度の関係式(流動則)求めた。二相分率を変えても流動則の応力-粒径依存性に変化は見られなかった。また二相分率と粘性変化の関係を求めた。二相分率が増加すると粘性は減少することが分かった。これは二相分率が変化することにより、(1)粒径が減少する効果と(2)構成鉱物の硬さの効果で説明できることが予想された。変形実験で求めた単成分の流動則と粒径変化から予想される二相分率と粘性変化の関係は、実験から得られた二相分率と粘性変化の関係と良く一致した。よって二相分率の関数として粘性を定式化する事に成功した。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究では、粒成長実験・変形実験を独立に行い、鉱物の量比を変化させた実験は行われて来なかった。本研究は、ナノパウダーを出発物質として使うことで、鉱物の組成、粒径を自由に変化させることに成功し、大気圧1軸圧縮試験機を用い、これまでよりも容易に変形実験をすることができるよう工夫した。本研究の粒成長実験・変形実験の結果は、既存のモデルを使って、鉱物の量比、粒径、粘性の関係式を定式化することに成功した。この成果は十分に研究目的を達成していると考える。
既存のモデルにおけるパラメータの選定とモデルの理論的背景を実験結果を比較する。フォルステライト・エンスタタイト2相系のみならず、他の鉱物組み合わせの系でも応用可能なモデルを構築する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (10件) 備考 (3件)
Nature
巻: 468 ページ: 1091-1094
Physics and Chemistry of Minerals 電子ジャーナル
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/tasaka/tasaka/tasaka.html