研究概要 |
本研究の目的は,衝撃波検出法を解析手法そのものに応用し,衝撃波という不連続現象を含む流れ場に対する新たな計算手法を提案することである.今年度は、これらの応用に焦点を当て研究を進めた。 (1)3次元衝撃波検出法の適用による複雑流れ場の解明 昨年度の研究成果である3次元衝撃波検出法を、複雑な流れ場に適用しその有効性を示した。具体的には、デルタ翼背面の衝撃波と渦とが干渉する流れを扱った。これに対して衝撃波検出を適用したところ、上流では1つの波面を形成していた衝撃波が、下流では渦の崩壊に伴って2つの波面に分岐するということが分かった。このような結果はこれまでに確認されなかったことから本検出法の有効性を明確に示すことができたと言える。 (2)圧縮領域中の衝撃波発生点に関する理論的・数値解析的考察 昨年度、理論的に考察した衝撃波発生点について、数値解析と衝撃波検出法を用いて詳細に議論した。その結果、理論では正しく説明できない領域において、衝撃波発生点が2点ではなく1点のみ存在する可能性が分かった。この研究は、衝撃波のようなエントロピー変化を伴う部分のみに数値粘性を付加するという試みを発展させる上で非常に重要であると考えられる。 (3)衝撃波検出結果を用いた解適合格子の生成 衝撃波検出法の流体解析への応用として、解適合格子生成を行った。従来の方法は、物理量の変化を差分で表現し、それを重みとして解適合格子を生成するものが主流であったが、この場合強い衝撃波と弱い衝撃波が混在する場合、弱い衝撃波には格子が適合されにくいという問題があった。それに対して、これまで開発した衝撃波検出法は、強弱にかかわらずすべての衝撃波を検出することが可能であるため、その結果を重みとして用いることで、あらゆる衝撃波に適合する格子を生成できると考えられる。実際、この方法を用いることで、衝撃波に良く適合した格子を生成することに成功した。
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