研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、遷移金属化合物の示す様々な新奇物性の発現機構を解明し、軌道やスピンの自由度を生かした遷移金属化合物の新材料・新機能開発に貢献することである。スピネル型MnV_2O_4のVサイトはパイロクア格子を形成し、格子に幾何学的フラストレーションを内包している。VイオンはV^<3+>で、t_<2g>軌道に3d^2の軌道自由度を持つ。58Kで反強磁性転移を示すが、この転移は立方晶から1軸が縮む正方晶への構造転移を伴うため、低温ではt_<2g>軌道の軌道整列が起きていると考えられている。我々はこのMnV_2O_4の光学測定を行い、軌道整列に伴う光学スペクトルの変化について研究してきた。本年度は特にフェムト秒ポンププローブ反射率測定を用いた光誘起相転移現象のダイナミクスの測定を行った。その結果、低温相に比較的強いフェムト秒レーザーを照射すると、数ps以内に立方晶相が出現することがわかった。またその反射率の時間発展において、異なった周期(~30ps、~60ps、~200ps)をもつ3種類のコヒーレント振動が観察された。これらの振動構造はそれぞれshockwaveを起源とするもの、面に垂直方向、水平方向の光誘起によって出現したドメイン境界の移動を起源とするものと想定される。また、バンド構造の変化を詳細に調べるため、水による自己位相変調により白色化したフェムト秒レーザーによる光学伝導度スペクトルの変化を測定した。また、VサイトにAlイオンをドープし、磁性転移は起こるが軌道整列は起こらないMn(V_<0.9>al_<0.1>)_2O_4の測定も行い、両者の比較から、この光誘起ダイナミクスにおける軌道の効果と磁性の効果について分離して議論した。その結果、光学スペクトルの変化は単純な高温相への変化ではないことがわかった。この結果は、遷移金属化合物の示す光誘起相転移について、新たな知見を切り開くものである。
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