研究課題
特別研究員奨励費
強誘電性と磁性を併せ持つ磁性強誘電体は、ジュール熱によるエネルギーの損失を極力抑えることでき、かつ電気分極及び磁化という複数の秩序変数を利用したデバイスの基本原理として期待されている。特に近年、らせん磁気構造によって誘起される電気分極が発見された事を契機として、新物質の探索や新しい物性制御方法の開拓に観点をおいた研究がなされてきた。強的な秩序を持つ物質では、電気分極や磁化の向きが180°あるいは90°異なるドメイン(分域)が形成される。このようなドメイン間に存在するドメイン壁(分域壁)の性質が抗電場や抗磁場の大きさ、あるいは外場応答の速さを決めるため、物性制御の観点ではドメイン壁の性質を調べることが重要である。このため本研究では、磁場印加により電気分極の方向が90°回転する斜方晶RMnO_3等の磁性居誘電体を対象として、電気分極回転時に現れるドメイン壁の制御方法を開拓することを目的として研究を行った。以下ではTb_<1-x>Dy_xMnO_3を対象とした研究について述べる。初めに単結晶試料を作成し、傾き磁場下での電気分極の回転する向きを調べた。実験結果から、電気分極回転時に現れるドメイン壁の厚さが試料の組成及び印加磁場の強度によって変化する事を見出した。強誘電体ではドメイン壁の運動は低周波の誘電率に寄与する。このため電気分極回転時の誘電率の変化を調べることで、ドメイン壁の易動度を調べることができる。電気分極測定と同じ試料について電気分極回転時の誘電率を調べた結果、磁場印加強度や試料組成に依存して誘電率の大きさが変化する事を見出した。傾き磁場下における電気分極の回転する向きの変化と電気分極回転時の誘電率の大きさの変化は振る舞いの傾向が一致していることから、本研究ではらせん磁性強誘電体における90°ドメイン壁の厚さおよび易動度を観測し、磁場や組成変化によって制御可能であることを明らかにした。
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Journal of the Physical Society of Japan (未定)(掲載確定)
Physical Review B 80
Jounal of Physics : Conference Series 200
Physical Review Letters 103
Physical Review Letters 102