研究課題
特別研究員奨励費
本研究では多孔質材料への新しいリチウム導入手法を確立し、リチウム導入により水素吸着量及び水素吸着熱の増加を達成し、実用に耐えうる新規水素貯蔵材料の開発につなげることを目的とした。対象とする多孔質材料として、金属イオンと有機配位子の架橋によって構成される多孔性配位高分子(PCP)に着目した。PCPは優れた細孔特性を有するため、水素貯蔵材料として有望視されている。このPCPにリチウムを導入することによって室温で十分な量の水素を貯蔵することが可能であると期待されている。前年度までにPCPにリチウム塩の溶液を含浸した後、熱処理によってアニオン種のみを脱離させリチウムを導入する手法を開発した。それによって水素吸着量の増加が確認された。本年度ではPCPにあらかじめリチウム交換サイトとして水酸基を組み込み、プロトンをリチウムと交換することによってリチウムを導入することを検討した。水酸基が組み込まれたPCPはほとんど報告がなかったため、Zn2+とテレフタル酸(BDC)によって構成されるMOF-5に水酸基を組み込むことをまず行った。MOF-5の合成時に用いる有機配位子であるBDCの一部を2-ヒドロキシテレフタル酸(HBDC)に置き換えることによって水酸基導入MOF-5(MOF-5-OH)の合成を行った。含まれるHBDCの量は0~54.2%の領域で制御が可能である。またHBDCが組み込まれることによって水素吸着量が増加した。また80℃においては最適な反応時間があり72時間ほどで組み込まれるHBDC量、収率が極大となった。その後、リチウムtert-ブトキシド(LiOtBu)およびリチウムジイソプロピルアミド(LDA)を用いてリチウム交換を行った。水素吸着量はリチウム導入によって1.23wt%から1.34wt%に増加した。また単位面積当たりの水素吸着量も1.24molecule/nm2から1.35molecule/nm2に増加した。また図4に示す水素吸着熱もリチウム導入によって5.07-4.22kJ/molから5.49-4.72kJ/molに増加した。以上のことからリチウム導入により水素吸着量、水素吸着熱の増加が確認された。細孔構造を崩壊させずに導入するリチウム量を増加することが出来れば、より水素吸着量、水素吸着熱の増加が期待できる。
すべて 2012 2011 2010
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (8件) 産業財産権 (1件)
Microporous and Mesoporous Materials
巻: 147 号: 1 ページ: 194-199
10.1016/j.micromeso.2011.06.014
Journal of the American chemical Society
巻: 133 号: 35 ページ: 13832-13835
10.1021/ja2046556
Adsorption
巻: 17 ページ: 211-218
ENEOS Technical Review
巻: 53 ページ: 5-8