研究課題
特別研究員奨励費
昨年度までで、衛星搭載超小型重力波検出器SWIMmnの運用を終了し観測データを得ていた。しかし、そのデータには不具合が発生していたためにそのまま科学解析に供することはできない状態であった。今年度は、まず不具合が発生していたデータの修復を行った。具体的には、複数回の重複したデータ取得を行っていたため、それを利用して通信経路によるデータ障害を取り除いた。さらに、衛星搭載プログラムによる不具合は、地上で異常モードを推定することによって障害を修復することに成功した。この修復作業によって衛星から取得した貴重なデータを利用できるようになったので、プロジェクトの最終目的の一つである、重力波探査を実施した。SWIMmnは、衛星のスピン姿勢制御によって「回転TOBA」という新しいタイプの重力波検出器を実現する。その回転TOBAは重力波の周波数変換によって低周波重力波に対する感度を持つ。さらに、回転と揃った方向(フォワードモード)と逆方向(リバースモード)の円偏光に対する直接的な感度をもつため、他の重力波検出器にはない、唯一の観測を行うことができる。得られたデータの統計的解析によって,宇宙背景重力波の臨界エネルギー密度に対する比の,フォワード・リバース各モードについての上限値を算出した。SWIMmnは小型軽量な実証機であるため,他の観測法(ドップラートラッキング)と比較すると感度が良いわけではないが,この結果は円偏光モードについての背景重力波の上限値を定めた初めての例となった。このように重力波探査という科学的成果を得られたことで、SWIMmnプロジェクトの重要な目的である、将来の重力波検出器につながる技術の軌道上実証を達成したといえる。これらの成果は、特別研究員の穀山が博士論文としてまとめた。さらに、投稿論文としても発表する準備を行っている。
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