研究概要 |
社会的場面でいかに自己を主張できるか,あるいは抑制できるかに関わる能力である社会的自己制御の促進要因について,以下の観点から多面的に検討した。 1.社会的自己制御における解釈レベルとマインドセットの効果:高次解釈といった主要な目標に重みづけを促す認知・思考状態を形成させることで,社会的場面における自己制御行動の成功が導かれることを明らかにした昨年度の知見をまとめ,社会心理学研究へ投稿した(現在,査読中)。また,自己制御育成に繋がる更なる知見の提供に向け,高次解釈活性のメカニズムを明らかにするための実験に向けた予備調査も並行して行い,現在,得られたデータをもとに分析中である。 2.地域社会環境が社会的自己制御へ及ぼす影響:昨年度収集した中学生対象のデータをもとに分析を行った結果,地域住民との交流は,集合的有能感(地域住民の協力体制や密着性の程度に関して,集団内で共有されている効力感)を媒介して社会的自己制御を促進するだけでなく,社会的自己制御に対して直接的にも肯定的影響を及ぼすことで,反社会的態度の形成を抑制することを明らかにした。 1.青年期における対人・達成領域のポジティブ・ネガティブ経験が社会的自己制御に及ぼす影響:昨年度得た下記の知見について,現在,Japanese Journal of Applied Psychologyの英文特集号に投稿中である。(1)ポジティブな達成経験は社会的自己制御の3側面全てを促進させる,(2)ネガティブな対人経験を経験しても,それを乗り越えることができれば自己主張の促進に繋がる。 なお,これまでの研究成果を纏めた内容を名古屋社会心理学研究会にて発表し,反社会的行動の予防・抑止を含め社会適応性を高めるための心理教育的介入に対する自己制御アプローチからの提案を行った。
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