研究概要 |
近年、プラスチックフィルム基板を用いたフレキシブルディスプレイの開発が世界規模で進められ、今後大きな市場の広がりが予測されている。フレキシブルディスプレイには自発光素子ある有機ELが有望視されている。有機ELディスプレイの駆動には電流制御可能なTFTが必要なため、今日液晶ディスプレイで一般的に使用されている非晶質Si-TFTは閾値変動が大きく、使用できない。そこで注目されるのが多結晶Si-TFTである。現在レーザーアニール再結晶化法による多結晶薄膜が検討されているが、高コスト化、大面積化に多くの技術的課題を抱えている。また従来の低圧プラズマCVD法は、フィルムに耐えうる低温化での多結晶Si成長は困難であった。この課題解決に挑戦すべく我々はパルス電界大気圧プラズマCVD法に焦点をあて研究を試みた.その結果,プラスチックフィルム上にインキュベーション層を介せずに高品質な多結晶Si成長に世界で初めて成功した。また同手法を使用して窒化Si薄膜の低温・高速成膜にも成功しており,その耐圧強度は約7.8MV/cmと一般的なTFT仕様の絶縁膜要求スペックを満たしている.実際にこれらの薄膜を使用し薄膜トランジスタを作製し移動度は約0.1cm^2/V・s,ON/OFF比は5桁以上の値を得た.また,従来の低圧プラズマCVD法では陰極降下の影響を受けるため,成膜は一般的にアノード側で行われてきた.一方,パルス電界常圧プラズマは両電極に等価なプラズマポテンシャルを形成する可能性がある.これを実証するべく両電極上に基板を設置し,Si成膜・評価を行った結果,同等な膜質・成膜速度であることを示した.この結果は両電極上に等価なプラズマポテンシャルの形成を示唆し,将来的に大幅なコスト低減に繋がると期待できる.
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