研究課題/領域番号 |
09J08412
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
電子・電気材料工学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丸山 俊 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2009 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2009年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 半導体低次元構造 / 光物性 / 半導体レーザー / 顕微分光測定 / 励起子 / 準熱平衡分布 / 国際情報交換 / アメリカ |
研究概要 |
本研究は、高品質半導体量子細線・量子井戸内の光励起キャリアのエネルギー分布を解明することを目的としている。本年度は(1)非ドープ量子井戸における非平衡キャリア分布の特徴付けと(2)共鳴Rayleigh散乱(RRS)とHeitler効果の関連性について検討を行った。 (1)に関しては、量子井戸に対する非共鳴励起条件下で形成される非平衡分布の定量評価と物理的解釈の検討を行った。熱平衡(Kennard-Stepanov)関係式とのズレを調査した結果、この非平衡分布は、励起子と連続状態の二つの部分系がそれぞれ準熱平衡状態となるが、二つの部分系の間には非平衡が生じるという極めて特徴的なものであることが特定できた。非平衡の度合いは低温ほど増大し、励起子と連続状態のキャリア数の比の準熱平衡状態からのずれは330倍(7K)にも達することが分かった。3準位モデル解析の結果、この非平衡の度合いは基底状態・励起子状態・連続状態の3準位間の遷移レートで合理的に説明できることも示せた。今回観測された非平衡は、励起子と連続状態の化学ポテンシャルがずれた状態、と表現することもでき、化学反応における親和力(Affinity)と直接関連することも示した。本研究による非平衡分布の評価手法の確立と、励起子系の非平衡状態の解明は、半導体光物性だけでなく非平衡物理の分野でも重要な意義を持つ。 (2)に関しては、前年度までに明らかになった、RRSとPLEスペクトル形状の相関関係の物理的意味を検討した。文献調査の結果、本研究の結果は、二準位原子系における共鳴蛍光、特にその極限的状況(分極緩和時間が輻射緩和時間に比べて十分長い状況)であるHeitler効果における発光成分と散乱成分の強度の相補的関係を、量子井戸においてはじめて確認したことに対応することが分かった。このことは、RRSは量子井戸の界面ラフネス(不均一)によって局在した励起子が散乱体となるため生じるとする従来のRRSの起源の理解を修正・深化させる重要な一歩である。
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