配分額 *注記 |
9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
2011年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2010年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2009年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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研究概要 |
本研究は農業的に重要な植物病原細菌および共生細菌の一種であるイネ白葉枯病菌とミヤコグサ根粒菌を対象とし,特に細菌ゲノムのDNAメチル化を介して行われる植物-微生物間相互作用の制御機構について解析した。イネ白葉枯病菌においては,遺伝子機能解析のための基盤リソースとして平均インサートサイズ約34kb,4224クローンからなるfosmidライブラリを構築した。このうち1092クローンについてはインサート両末端領域の塩基配列を決定し,全ゲノム塩基配列上にマッピングした。これらのクローンでカバーされないゲノム領域は3次元PCRによってクローンを補完し,全ゲノムをカバーする整列化ライブラリを確立した。ミヤコグサ根粒菌においては,DNAアデニンメチラーゼの一種であるCcrMの過剰発現株を構築し,宿主植物であるミヤコグサに対する接種試験を行った。その結果,DNAメチラーゼの過剰発現によって根粒菌ゲノムが高度にメチル化修飾を受けると,根粒形成に著しい遅延が引き起こされることを明らかにした。また,レポーター菌株を構築して根粒形成におけるDNAメチラーゼの発現時期特異性を調査し,DNAメチラーゼが接種21日後に多量に産生され,直後に分解されることを明らかにした。さらに,無限型根粒を形成するタルウマゴヤシ-根粒菌の共生系においても同様に発現解析を行い,根粒中のinvasion zoneとfixation zoneの境界領域においてDNAメチラーゼの発現が強く誘導されることを明らかにした。タルウマゴヤシ根粒においてDNAメチラーゼの発現が誘導された領域は共生窒素固定が開始される直前の段階であり,ミヤコグサ根粒における接種21日後頃に相当すると考えられる。つまり,遺伝的に比較的遠縁なミヤコグサとタルウマゴヤシにおいて,根粒菌のDNAメチラーゼを介した制御メカニズムが両植物および根粒菌間で保存されており,植物-根粒菌間の共生におけるDNAメチル化を介した遺伝子発現制御機構が普遍的なものである可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で同定したDNAメチル化による制御を受ける遺伝子について,生化学的手法を用いて分子レベルでの制御メカニズムを明らかにする必要がある。また,本研究で対象としたDNAメチラーゼは根粒菌以外の細菌においても高度に保存されていることから,特に病原細菌におけるオーソログについても研究対象を拡大し,より広義の生物間相互作用におけるDNAメチル化の機能を明らかにする必要がある。
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