本年度の大きな成果は、昨年度の調査を盛り込んだ博士論文「顧みられない熱帯病〈ブルーリ潰瘍問題〉に対する感染症対策ネットワーク構築と小規模NGOの役割」を執筆したことである。本論では次の5点について明らかにしている。 第1に、グローバルな感染症対策ネットワークの構築可能性の論議に向け、感染症を取り巻く状況やミレニアム開発目標などの動向に加え、NGOのかかわり、ネットワーク構築といった先行研究の検討を行った。第2に、顧みられない熱帯病・ブルーリ潰瘍問題が抱える問題を明らかにした。第3に、第2で明らかにした問題に対して、どのような対策・支援が実施されてきたのか、ブルーリ潰瘍問題に取り組んできた国際機関(WHO)、政府(被援助国)、NGOの3者を取り上げながらの考察を試みた。第4に、支援団体のなかでも日本で数少ないブルーリ潰瘍支援団体である「神戸国際大学ブルーリ潰瘍問題支援プロジェクト」を取り上げ、活動などの分析を行った。第5に、以上のようなことを踏まえ、これまでブルーリ潰瘍問題に対して、どのような形での支援が展開されてきたのかを考察している。 また、2011年3月には、ブルーリ潰瘍対策専門家会議(WHO Annual Meeting on Buruli Ulcer)での報告"An Integrated Approach to Education Aids in West Africa"を行った。
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