研究課題/領域番号 |
09J08921
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
数理物理・物性基礎
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 駿 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2009 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2009年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 自己形成量子ドット / スピン軌道相互作用 / スピンコヒーレンス / 近藤効果 / スピン操作 / 電子スピン共鳴 / 電子輸送現象 |
研究概要 |
当該年度では、単一のInAs自己形成量子ドット(SAQD)において、g因子の電気的制御による電子スピン回転操作の実現に向けて、g因子の異方性を調べること中心とした研究を立案、実施した。 これまで、単一InAs SAQDにおける電子のスピン軌道相互作用(SOI)の大きさと異方性を調べてきた。また、同系における高周波応答も調べてきた。その結果、InAs系の特徴である大きなSOIを利用することによって、マイクロ波によるスピン回転操作が期待できることが分かってきた。 一方、g因子の異方性を電気的に制御することによっても電子スピンの操作は可能であり、これにはgテンソル変調共鳴(g-TMR)を利用する。InAs SAQDではg因子もまた大きいため、このg-TMRによる高速なスピン操作も期待できる。当該年度では、この方法によるスピン操作に向けて同系におけるg因子の異方性とその電気的制御を目的とした。 対象とする単一のInAs SAQDの付近にサイドゲートを設け、ここにゲート電圧を印可することによって、ドットの面内方向の閉じ込めポテンシャルやドットに閉じ込められた電子の波動関数を変調することができる。g因子はクーロンブロッケードにおける高次のトンネル現象である、非弾性コトンネリングの磁場発展から見積もった。また、g因子の異方性は希釈冷凍機内に導入したvector magnetを利用して、3次元的に調べた。 その結果、InAs SAQDの系におけるg因子は、ドットの閉じ込めの異方性や、電子の属する軌道の対称性を反映することが分かった。また、これまでの同系でのg因子の異方性と比較することによって、ドットの閉じ込めポテンシャルがドットに接続するソース-ドレイン電極の接続の対称性に依存することが分かった。これは、電極がその下部の電子を追い出すように、高いポテンシャルを形成するためである。 さらに、サイドゲートによってg因子の電気的変調にも成功し、この変調の大きさから、g-TMRによるスピン操作を仮定した場合、そのスピードはラビ周波数に換算して0.88MHzの値を得た。この値は、これまでに報告されている他の方法による電子スピン操作周波数に劣るが、より異方的なポテンシャルをもつドットを利用することによって、今回見積もられた周波数よりも高速なスピン操作は実現可能であると考えられる。 この結果は、下記の国内学会で発表し、現在、投稿論文を準備中である。また、昨年度に得られた光介在トンネルに関する研究成果を下記の国内、国外学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、単一のInAs自己形成量子ドット(SAQD)において、g因子の電気的制御による電子スピン回転操作の実現に向けて、g因子の異方性を調べること中心とした研究を立案、実施、成功した。これは、交付申請書に記載した研究目的をおおむね達成している。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度では、単一のInAs自己形成量子ドット(SAQD)において、g因子の電気的制御による電子スピン回転操作の実現に向けて、g因子の異方性を調べること中心とした研究を立案、実施した。 また、これまでに単一InAs SAQDにおける電子のスピン軌道相互作用(SOI)の大きさと異方性や、同系における高周波応答を調べてきた。 その結果、InAs系の特徴である大きなSOIを利用することによって、マイクロ波によるスピン回転操作が期待できることが分かってきたため、これを実施することが今後の推進方策である。
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