研究課題
特別研究員奨励費
我々はヘリオバクテリアのRC(以下HbRC)を用いて時間分解電子スピン共鳴(TR-ESR)測定を行い、光誘起された還元型キノン分子(A_1^-)と酸化型電子供与体クロロフィル2量体P800(P+)のラジカル対(P^+A_1^-)由来のスピン分極(ESP)信号の検出に成功した。その信号形は他のRCのP^+A_1^-信号の形とは大きく異なっていた。ESP信号は、ラジカル間の距離、分子配向、電子移動速度、などを反映するので、スペクトルのシミュレーションから各パラメータを推定した。さらに詳細な構造情報を得るために配向膜標品で、外部磁場と膜面との角度を変化させながらP^+A_1^-信号を検出し角度依存性を解析した。PSIRCの結晶構造と電子担体間の相対配置を比較対照としてこの信号を検討した。この結果A_1の分子配向がPSIRCと異なることが推定された。アミノ酸配列の比較から、HbRCはPSIRCよりもAl結合サイトが親水的でありキノン分子が弱く結合していると推測される。P^+A_1^-ラジカル対の電荷再結合速度の温度依存性もPSIRCと異なっており、A_1を介した電子移動反応がPSIRCと異なると考えられる。PSIRCではキノン分子A_1に続いて4Fe4SクラスターF_x、F_A、F_Bが電子受容体として機能している。HbRCでも過去に4Fe4SクラスターのESR信号が報告され性質の理解が進められているが、その同定もできていない。我々はヘリオバクテリアの配向膜標品を用いて4Fe4Sクラスターの膜内配向を調べ、PSIRC内4Fe4Sクラスターの結果と比較した。F_Bと帰属されていた4Fe4Sクラスターの配向はPSIRC-F_Aに近かった。酸化還元特性もPSIRC-F_Aに似ており、F_A結合サイトのクラスターである可能性が高い。また光誘起されるS=1/2型ESR信号の配向がPSIRC-Fxの配向と近く、F_xに帰属された。現在これらの結果を論文2編にまとめ投稿準備中である。
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