研究課題
特別研究員奨励費
本研究では当初は「点不斉」よりも高度な不斉機能を示す「軸不斉」に着目し、らせん高分子合成とその機能について検討してきたが、昨年度、さらに興味深い不斉機能を示す「トポロジカルキラリティー」に基づいて片巻きらせん高分子の構築とその構造制御が可能であることを見いだした。トポロジカルキラリティーとは各成分に方向性のあるロタキサンやカテナン等のインターロック分子に特有なキラリティーであり、これまでにこのトポロジカルキラリティーは不斉源として利用した例はこれまでにないため、本年度はその不斉源としての基本的な性質について検討することとした。まず、ロタキサンの輪成分上の置換基を大きくしてもその不斉の程度は変化しないが、置換基の向いている方向を変更することにより、より強い不斉源として働くことがわかった。次に、輪成分上の置換基を光学活性なものにした時の片巻きらせん誘起能について検討したところ、驚くべきことに輪成分上の置換基の不斉には全く主鎖の片巻きらせん誘起力はなく、トポロジカルキラリティーに由来する不斉が支配的に片巻きらせんを誘起していることがわかり、トポロジカルキラリティーの不斉の高さが示された。また、左右対称な軸成分を有するロタキサンにおいては、輪成分が軸上の中央に位置しない時には輪成分の位置により軸成分に方向性が誘起されるため、不斉が発現することも初めて見いだした。また軸成分の中央に輪成分が低温では貫通できないが高温では貫通できる程度の嵩高さの置換基を導入することによって、輪成分の軸の中央基乗り越えに伴うラセミ化が起こることがわかり、置換基の大きさとラセミ化の速度論的および熱力学的パラメータの相関について検討することができた。また、輪成分を外部刺激により中央へと導くと、ラセミ化は瞬時に進行することもわかり、トポロジカルキラリティーのラセミ化速度のスイッチも可能であることがわかった。
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