研究概要 |
私は、結び目理論のみならず、表現論からも注目されているコバノフホモロジーの理論を用いて結び目の交代化数の研究を行ってきた。 交代結び目とは、紐を辿ると上交差と下交差が交互に出る図式をもつ結び目のことである。結び目の交代化数(alternation number)は、与えられた結び目が、どれだけ交代結び目から離れているのかを測る不変量の一つである。交代化数の研究における課題は交代化数の下からの評価を与えることであった。私は、新しい交代化数の下からの評価を与えることに成功した。この評価方法の特徴は、2つの不変量(古典的な不変量である結び目の符号数とコバノフホモロジーに由来するラスムッセン不変量)を組み合わせて用いた点である。この評価は強力であり、現在のところ最も有効な評価式である。また具体的な結び目の交代化数の評価にも適していた。 交代化数の応用上、ラスムッセン不変量の計算は本質的に重要である。私は、論文「The Rasmussen invariant of a homogeneous knot」において、等質結び目という、交代結びを一般化した結び目にクラスのラスムッセン不変量を完全に決定した。したがって、非等質結び目のラスムッセン不変量を求めることが課題となる。私は、論文「Lee's homology and Rasmussen invariant」において、典型的な非等質結び目であるタイプ(-3,5,7)のプレツェル結び目のラスムッセン不変量を計算する新しい方法を示唆する結果を得た。
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