研究課題
特別研究員奨励費
特許権のライセンス契約は、多くの先行研究で非協力ゲーム理論の枠組みにより分析されている。そのため、それらの先行研究は、現実に観察されるライセンス料の「交渉」という側面が考慮されていない。そこで、協力ゲーム理論の枠組みでライセンス料交渉という側面を明確にモデル化することにより、より現実的なライセンス契約を分析することが、本研究課題の目的である。本年度は、「ライセンス料支払い方法(ライセンスポリシー)を考慮したライセンス料交渉」を分析し、その交渉結果を特徴づけることを研究目的として挙げていた。しかし、前年度にその分析を行い、興味深い結果を得ることが出来たため、本年度は、前年度に分析することが出来なかった「ライセンス料交渉における最適なライセンシー数」についての分析を行った。協力ゲーム理論により分析された特許ライセンス契約の先行研究では、特許権者とライセンスされる企業とのライセンス料交渉を提携構造付きの協力ゲームとして定式化し、解概念として交渉集合を用いて分析が行われた。しかし、交渉集合では、交渉の結果として合意するライセンス料を明確に特徴付けられないという問題点が明らかになった。この先行研究の結果を踏まえて、本年度に行った研究では、先行研究とは異なる解概念のカーネルと仁を用いて交渉結果を明確に特徴付け、先行研究において明らかにされていなかった「ライセンス料交渉における最適なライセンシー数」に解答を与えることを目的とした。この研究により、以下の結果が得られた。任意の提携構造に対して、カーネルは一点集合になり、仁と一致する。それゆえ、カーネルを解概念として用いることにより、特許権者にとってライセンス収入を最大化するライセンシー数を特定できることが明らかになった。さらに、線形のクールノー市場において、特許権者はライセンス収入を最大化するために、全ての潜在的なライセンシーではなく、その一部にのみ特許技術をライセンスすることが、数値計算により明らかになった。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
Mathematical Social Sciences
巻: 61 ページ: 114-123
Proceedings of the 9th International Symposium on Operations Research and Its Applications (Chengdu-Jiuzhaigou, China, August 19-23, 2011)
ページ: 195-203
Bulletin of Economic Research (In press)
https://sites.google.com/site/skishimoto0211/