研究概要 |
我々は情報化社会といわれる環境の中で多くの情報を授受しながら生活している.今後もより多くの情報を伝えるための道具として,ディスプレイが用いられるであろう.安全かつ環境負荷の少ない社会を実現するためには,ディスプレイも形を変え,次世代へ発展していくと考えられる.この一つとして,透明で湾曲することができるフレキシブルなディスプレイやコンピュータの開発が進められており,このようなディスプレイを構成する重要な素子が薄膜トランジスタ(TFT)である.TFTの機能は画素の表示・非表示を切り替えるスイッチングを行うことであり,その性能を大きく左右するものはTFTに用いられている半導体薄膜である.酸化物半導体は可視光に対して透明な材料であり,それ自体は室温で成膜することが可能で,次世代ディスプレイの構成材料として最も適していると位置づけられる.しかし信頼性や性能の不足などの課題がある.本研究では,金属酸化物半導体の応用に関わる性能向上を目的とした.その一つとして,高圧水蒸気を用いた手法を提案した.これにより,酸化物半導体IGZOを用いたTFTの移動度の向上が見られた.さらに,バイアスストレスを印加した加速試験においても大気圧熱処理時より安定化することがわかった.レーザーを用いた熱処理方法については,非晶質ではなく多結晶のIZO薄膜を用い,IZOTFTの移動度が従来の熱処理法の2倍程度に向上した.この時の基板への熱拡散の到達温度が50度以下であり,基板への熱ダメージが無く,高性能な移動度が実現できた.今後レーザー照射条件の最適化により,さらに高移動度化が見込めると考えられる.以上のように,酸化物半導体薄膜の高性能化を達成することができた.
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