研究課題
特別研究員奨励費
化合物における光学中心の立体を決定することは、生体がキラル中心を持ったアミノ酸で構成されていることから鑑みても非常に重要である。既存の方法論を用いた立体決定法では、サンプル消費量やリファレンス化合物が不可欠になるなどの問題点が存在した。そこで私は、昨年度まで行ってきた糖鎖の構造解析において得られた知見を応用し、質量分析法を用いた光学中心の立体決定に取り組んだ。本年度は昨年度得られた基礎的な情報を元に、方法論をより確かなものにするべく詳細な検討を行った。本法では対象のエナンチオマーに対してキラル補助団を導入し、得られたジアステレオマーにおける立体的混み合いの差に基づいて立体構造の判別と決定を行うものである。そのため導入するキラル補助団における混み合いを生み出す主要因となる官能基を厳密に決定することが求められる。実験科学的なアプローチとして、異なった鎖長のアルキル基を持ったアミンに対して保護アミノ酸を導入し検討を行ったところ、ジアステレオマー間の安定性の差がアルキル鎖に依存して変化した。これは解析対象によって適切な官能基の大きさが存在することを示唆する結果である。つまり、より適切なキラル補助団を選択することが明確な立体決定を可能にすると考えられる。以上の考察に基づき、いくつかの特殊な構造を持つ化合物についても検討を行った。これらの結果を含めた一連の内容は、国際・国内学会にて発表を行い、日本糖質学会ではポスター賞を受賞した。また現在、海外学術雑誌へ論文を投稿中である。また、糖鎖の構造解析についても昨年度に続き検討を行った。特に単糖におけるアノマー位の立体構造判別が可能であり、これらが気相におけるナトリウムイオンと形成する配位の安定性に起因することを、実験科学的に世界で初めて明らかにした。この成果は国際学会にて発表を行った。また現在、海外学術雑誌へ投稿中である。
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Rapid Communications in Mass Spectrometry
巻: 25 号: 11 ページ: 1617-1624
10.1002/rcm.5031
Organic & Biomolecular Chemistry 7
ページ: 4726-4733